The Door into Summer 2014

夫です。今回は東京で現在まで交流が続いている友人の中でも一番古い、なんてったって小学校の頃からの付き合いになるあのTOKYO No.1 SOUL SETの俊ちゃんこと渡辺俊美君が最近上梓したばかりのお弁当エッセイ『461個の弁当は親父と息子の男の約束』を紹介しちゃいます。勿論、俊ちゃんが高校生の息子の登生(トーイ)くんにお弁当を作ってて、その写真をTwitterで公開しているという噂は聞いてました。でも実際にこういう形でまとめられた本書を店頭で手にしてパラパラと捲ってみて驚いた!二日酔いの朝も、早出の朝も3年間毎日作り続けたお弁当、その数461食って超凄過ぎ!週に1、2回、経堂まで夢太を幼稚園に送っていくだけでもヒーヒー言ってる僕なんかとても足元にも及ばない偉業っス(汗)。僕にとって俊ちゃんの息子の登生くんが今年の4月から大学生って言うことは実はとっても感慨深いのです。何故なら僕がかつてスチャダラパーというアーティストを担当していた頃、皆さんもきっとご存知の『今夜はブギー・バック』というシングルの大ヒットを受けてリリースされたベスト盤『ポテン・ヒッツ~シングル・コレクション』(メチャメチャ自虐的なタイトル笑)にボーナス・トラックとして『コロコロなるまま』という曲のリミックス・ヴァージョンを収録することになりました。そのリミックス・タイトルが、確かBOSEが決めたんだっけ?それともみんなで決めたんだっけ?もはや詳細は思い出せないけど登生くんの誕生を祝して”年男登生(としおとこトーイ)MIX”と命名したのです(笑)。それが『今夜はブギー・バック』と同じ年、つまり1994年だからあれから20年も経ってしまったと言う訳です。そりゃBOSEにも娘が生まれる訳です!そりゃ下北沢の「ぶーふーうー」(今年、4月15日に惜しくも閉店!)も無くなる訳です(涙)。当時、終電を気にする相模大野在住のクラブキッズとしては下北ナイトクラブ→ZOO→スリッツ時代に「ぶーふーうー」、始発までお世話になったものです。

話が逸れてしまいましたが俊ちゃんのこの本、今までありそうでなかったとてもユニークな1冊になっています。だって完全なエッセイでもなければ、完全な写真本でもなく、ましてや完全な料理レシピ本ですらない。一言で言えばお弁当をメタファーにした俊ちゃんと登生くんの3年間のドキュメントとでも言えるのかな?むしろ沢村貞子の『わたしの献立日記』なんかに近いお弁当の写真による記憶の回路みたいな?無骨なまでに徹底して毎日記録することで掛け替えのない父と息子の3年間が鮮明に浮かび上がってくるのです。もしかしたらネタバレになっちゃうかもしれないけど、本編を読む前に巻末に記載されている登生くんからの「お父さんへ」という文章を先に読んで泣いてしまいました(苦笑)。今や息子がいて、もはや人の子ですら父親目線でしか見れなくなってしまった僕にとって「お父さんも、お父さんの弁当も本当に大好きです。3年間本当にありがとうございました。」って言う登生くんの文章、号泣もんです。大学生になっても継続してパパのお弁当を所望した登生くんに「学食でのコミュニケーションも楽しいよ!」と諭す俊ちゃんのエピソード、子育てってきっとこういうことなんだろうなー。他にも登生くんが高校生になってお弁当を作り始めた当初の頃、ほとんどの子たちはコンビニや売店でお昼を買って食べてるという話を聞きつけた俊ちゃんが「登生は自分が作るお弁当のせいで友達とコミュニケーションが出来なくなっているんじゃないか?」と危惧し「パパの弁当やめてもいいんだよ?」と提案したっていう話とか思わず涙ぐんでしまう、パパの気持ち共感出来過ぎて(涙)。僕は幼稚園のお父さん会の自己紹介で「いつかはお弁当作りにも挑戦したいです!」とか豪語しておきながら、実は今のところ夢太のお弁当、一度も作ってません(笑)。そんな僕のお弁当作りへのモチベーションを上げてくれそうな面白いコンテンツがこの本には盛り沢山!ダンディでルードで洒落た大人の不良のお手本として若い子からも慕われている俊ちゃんらしいこだわりがこの本の隅々にまで行き渡っています。それは料理道具を始めとする柳宗理の鍋やボールだったり、TOKYO No.1 SOUL SETやZOOT16でのツァーで行く先々で出合った素敵な食材や珍味の数々だったり、弁当箱としての使用を思いついた実用的民芸品としてのわっぱなんかだったり、料理のセンスを学んだ名著の数々、それは池波正太郎や辰巳芳子、伊丹十三から東海林さだお、マンガ『美味しんぼ』のお弁当に焦点を当てた愛蔵版『美味しんぼ 本日快晴!味な行楽弁当編』まで、何か渡辺家の台所廻りを覗いているような気分になります。そして勿論、日々俊ちゃんが作り続けた数々のお弁当の写真を眺めているだけでも幸せな気分になれます。どこからでも読めるユニークなお弁当エッセイ+秘伝の調味料、特性おかずのレシピ、(渡辺家の)弁当作りの極意などなど(同書帯より!)というボーナス・トラック付き!まさに一家に1冊の名著、全てのパパたちへお薦めです!俊ちゃんへ。聞くところによると何か凄く売れてて増刷かかってるみたいですね!おめでとう!

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ちなみに先日、映画『モテキ』の大根(仁)監督と一緒に吉祥寺のバウスシアターのクロージングイベント、『THE LAST BAUS さよならバウスシアター、最後の宴』のプログラムの一環として行われた第7回爆音映画祭での『ゆらゆら帝国2009.0426LIVE@日比谷野外大音楽堂(監督:大根仁)の上映を見に行った時にも二人で俊ちゃんの本の話になりました。大根さん曰く「あんなに泣ける料理本ってないんじゃないっすか?」。同感です。
しかし下北沢の「ぶーふーうー」だけじゃなく僕らの青春時代を彩った吉祥寺のマイルストーン的多目的シアター、バウスシアターも遂に無くなってしまった・・・。そう言えばこの日のことを大根さんもTVブロスの連載『早春スケッチブック』でも書いていたけど、僕が大根さんにゆらゆら帝国のこの作品の監督をお願いするにいたったエピソード、その舞台となった下北沢の大好きだった居酒屋『はるがだ』だってもはや無くなって久しい。20年かー!何度も言うけどそりやぁ登生くんも大学生になるわけだ(苦笑)

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何かAMEMIYAの『冷やし中華はじめました』じゃないけど(笑)、街の中華料理屋や食堂、コンビニとかに『冷やし中華はじめました』の貼り紙が目につき始める季節がやってまいりました。僕はもう冷やし中華が食べたくて食べたくて落ち着かない日々を過ごしてました(笑)しかし何でこうも冷やし中華は僕らを猛烈に魅了して止まないのでしょうか?僕が中学生の頃、ジャズピアニストの山下洋輔さんが冬に冷やし中華が食べられないことに異議を申し立てて『全日本冷やし中華愛好会(略称:全冷中)という団体を立ち上げてSF作家の筒井康隆とかタモリ、赤塚不二夫、坂田明あたりの当時のアングラ文化人、ジャズミュージシャンや漫画家、演出家なんかで本を出したりイベントやったりしてたのを朧げに憶えてます。しかし中華と名乗っている割に中華麺を使用している以外は概ね和食じゃない?冷やし中華って(笑)ちなみに冷やし中華の味覚を大きく左右する汁に関しては大きく醤油と酢、あるいはゴマだれの二つになると思うんですけど僕的には断然醤油と酢以外ありえないですね!個人的にゴマだれだとちょっと甘過ぎる気がします。何故にこのように落ち着かない日々を過ごしていたのかと言うと、今年の最初の冷やし中華は代々木公園の昭和な中華屋の名店『大番』でと決めていたから!って何か昭和の処女とか『うる星やつら』のラムちゃんみたいなこと言ってますが(笑)。これまで僕にとって『大番』と言えばタンメンと餃子がデフォルトだったのです!それが昨年の夏、あまりの猛暑ぶりに煽られて初オーダーした冷やし中華、正確には『チャーシュー入り冷やし中華そば』の美味しかったことと言ったら!冷やし中華の魅力に遂に開眼してしまったのです(笑)『大番』には普通の冷やし中華もありますが、僕にとってはハムが入っているにも関わらずプラスオンされたチャーシューが入っている『チャーシュー入り冷やし中華そば』が定番!冷やし中華と白く脂が固まった厚めに切られた自家製チャーシューの相性が何故か異常に良くて、今ではウチで冷やし中華作る時ですら必ずハムに加えチャーシューも入れてます!さらにここのお母さんが盛りつけてくれる冷やし中華の具の彩りが本当に素晴らしい!いつも食べるのが惜しくなってしまうくらい繊細かつ美しい!多分、僕が想像するに『大番』というお店は全てにおいて、独特の審美眼に貫かれているような気がしてならない。それを感じさせるのがこのお店を支配する圧倒的な清潔感!お店自体はお世辞にも決して新しくもなく綺麗でもないにも関わらず、その完璧に掃除の行き届いた清潔感はある種のフェティシズムすら感じさせるほど。もしあなたが『大番』を訪れることがあったら是非、カウンターの下の荷物置きに配置された週刊新潮と少年マガジンの規則的配置に注目してください!常に油を多用しランチタイムでの喫煙すら可能な街の中華屋さんをして、この清潔感は毎日シンクや壁、床の全てを拭いているんじゃないかと思わせるほどの徹底ぶり!でもルカナルの奥村さんも『大番』の料理の油感の無さ、化学調味料感の無さを絶賛していたように、勿論そのイズムは料理にも完璧に反映されているんじゃないかな?ちなみに『大番』は料理を作るお父さん、そしてそのお手伝いをするお母さん、さらにフロアーは通常、腰の曲がったお婆ちゃんが水を運んだり、オーダーをとったりしているけど忙しい時はさらに娘さんが厨房の中と外のサポートしているという所謂典型的な家族経営のお店です。
何にもない夏の昼下がり、NHKの連続テレビ小説の再放送をBGMにカウンターで一人で食す大番のチャーシュー入り冷やし中華、それが僕にとって現在想像し得る最高に至福な瞬間、まさに『夏への扉』(The Door into Summer)なのです(笑)

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